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エコライフの実現や売電、光熱費カットなどなど、魅力の多いソーラーパネル設置による太陽光発電。
新築の場合ではなくても、機会があれば設置したい!と思っている人は多いですよね。
一般的には住宅の屋根に設置することが多いソーラーパネルなので、そこにはやはり「太陽光発電と相性のイイ屋根とそうでないもの」があります。
ここでは太陽光発電を上手に利用するために、屋根とソーラーパネルの関係をご紹介していきます。
どんな屋根が相性が良い?日本の家屋事情とソーラーパネルの関係
最近ではデザイナーズハウスのような個性的な住宅もちらほらと散見されるようになっていますが、どちらかというと日本の家屋というのは画一的なデザインになりがちなところがあります。
ただ、それは悪い事ではなくて、やはり多くの人が選ぶデザインには、耐久性とか外観の良さなど、それなりに理由があるものです。
日本の家屋の中で多い屋根の造りは切妻(きりつま)屋根や寄棟(よせむね)屋根と言われるもの。
具体的には、日本の家屋の約50%弱が切妻屋根、約30%が寄棟屋根、約13%が片流れ屋根、陸屋根が約5%、それ以外が約4%という割合なのです。
これらのことから考えると、母数が多いので切妻屋根にソーラーパネルを設置している人が必然的に多くなりますよね。
しかし、既存の住宅が切妻屋根だったからと言って、ソーラーパネルとの相性は良いのでしょうか?
ここからはこうした「屋根の造り」とソーラーパネル・太陽光発電の相性について詳しく見ていきます。
切妻屋根
形状
長方形(もしくは正方形)を真ん中から二つに折ったようなシンプルな形をしている屋根で、日照面積が大きく取れるのが特徴です。
日本の家屋で本当に良く見る形の屋根の造りとなっています。
ソーラーパネルとの相性
日照面積が広いので、ソーラーパネルとの相性は抜群です。理想はどちらかの斜面が南側を向いていることです。
ただ、片側が東、もう一方が西といった向きであればより多くの発電量が得られる可能性も高いです。
寄棟屋根
形状
台形2枚の短い上辺を合わせ、その側面に三角形を合わせた計4枚の面がある屋根で、こちらも日本家屋にはよくある造りです。
家がどういった向きに建てらていても、北側に向く面を除いて、他の三面全てに日照が多くなるのが特徴です。
ただ、1面ずつの屋根の面積は切妻屋根などと比較すると狭くなります。
ソーラーパネルとの相性
北側を向く屋根以外の三面全てにソーラーパネルを設置することが可能です。
理想は台形部分である広い面の片側が南を向いているか、広い面が東西を向いていることですね。
屋根には三角形の部分ができるので、屋根の形状に合わせ、三角のソーラーパネルなどをうまく利用することがポイントとなります。
片流れ屋根
形状
屋根は1枚の四角い平面でできていて、言うなれば大きな広い滑り台のような形になるような屋根のことです。
屋根の傾斜の向きによって、日照の具合が大きく変わってくるのが特徴です。
一般的にはベランダやバルコニーを南側に設置するので、北向きに傾斜がある家屋が多いようです。
ソーラーパネルとの相性
一面屋根のため、傾斜の向きが南側であれば、広い屋根に効率よくソーラーパネルを設置し、太陽光発電を行うことが可能になります。
ただ、上記でも述べたように、ベランダやバルコニーを南側に造ると、屋根は北側に向かって傾斜することになり、効率の良い太陽光発電を見込めなくなる場合もあります。
屋根の傾斜の方向によって、太陽光をどこまで利用できるかのメリットが大きく変わってくると言えるでしょう。
陸(りく、もしくはろく)屋根(平屋根とも言う)
形状
最近のデザイン重視の家屋によく見られる屋根で、屋根が平らであるのが特徴です。
鉄筋コンクリート製の家や、鉄骨系の住宅で頻繁に見られる形状の屋根です。
ソーラーパネルとの相性
陸屋根については、ソーラーパネルを設置するには、屋根部分がコンクリート製であることが基本的な条件となります。
さらに既存の陸屋根住宅にソーラーパネルを設置する場合には、家の図面も必要となります(新築だとパネルを設置することを念頭に置いて設計されるのですが既存ではそうではないため)。
ただ、屋根自体にはそもそも傾斜がないので、ソーラーパネルが設置可能となると、ベストな採光にするためのパネルの角度調節ができ、効率的な太陽光発電を期待できます。
反面、パネルとパネルを設置している土台自身が強烈な風の影響などを受けることが理由で、設置が難しい地域もでてきます。
招き屋根
形状
切妻屋根の亜種といった形状の屋根です。
家のデザインや立地条件、周囲との日照権などの兼ね合いで、同じ「招き屋根」と言っても様々な形状がみられます。
ソーラーパネルとの相性
形状が本当に様々なので、一概には言えませんが、屋根の1番広い面が南向きであれば、かなり多くのモジュールを設置することが可能になります。
その形状によっては、南に傾斜している片流れ屋根と同等程度のパネル設置も見込めます。
方形(ほうぎょう)屋根
形状
4枚の二等辺三角形を合わせて、上から見ると正方形に見える屋根です。ちょうどピラミッドを平たくしたような形をしていると言えるでしょう。
この屋根も、寄棟屋根と同様に、どういった立地で建てられていても、屋根の3面で採光ができます。
ソーラーパネルとの相性
北側以外の屋根にソーラーパネルを設置することが可能なので、効率よく発電ができると期待できます。
ただ、方形屋根の住宅と言うのは、住宅自身が大きなものになることが少ないため、設置できるパネルも多くなくなることがよくあります。
入母屋(いりもや)屋根
形状
昔ながらの日本家屋によく見られる屋根の造りで、身近なところでは神社などの屋根が入母屋造りのことが多いですね。
通常入母屋造りの屋根というのは、一般住宅の場合だと瓦になるのですが、瓦の下には土か杉板が敷いてあります。
屋根の面は広い面と狭い面でかなり面積差があるのが特徴です。
ソーラーパネルとの相性
屋根瓦の下の造りが杉板である場合、ソーラーパネルの設置は要検討となることが多いようです。
ソーラーパネルを設置するには、土台にもそれなりの強度が必要なためです。
採光の面から言うと、入母屋造りの屋根は、広い面が片面ずつ南北を向いていることが多いので、南面にパネルを問題なく設置できれば、かなり広いパネルを設置することが可能になります。
ただ、寄棟造りや方形屋根のように3面にわたってパネルを設置することは難しい場合が多く、広い面が南に向いているかどうかが、効率的な太陽光発電ができるかに大きく関わってきます。
重要なのは形状だけではない!屋根の建材にも注意が必要!
現在、屋根の建材として用いられることが多いものには、瓦・スレート・金属などがあります。
こうした「屋根材に何が使われているか」もソーラーパネルの設置には大きく関わってきます。
屋根材が瓦の場合
瓦屋根と言うのは耐火や防水、防音、断熱性に優れた日本に昔からある屋根材です。
しっかりと葺かれていればいれば、メンテナンスも頻繁に必要ではありませんし、屋根材としては頼りがいのある素材です。
ただ、やはり土を焼いたものであるので重さがネックとなってきます。重さがある=耐震性が下がるということです。
既存の家にソーラーパネルと言う、これまた重さのあるものを載せるとなると、家を建てた際の耐震評価も変わってくるので注意が必要です。
瓦屋根の住宅にソーラーパネルを設置する場合は「アンカー工法」「支持金具工法」「支持瓦工法」のいずれかを使ってパネルを設置するのが一般的です。
・「アンカー工法」…直接屋根に金具を取り付ける方法です。屋根に穴を開けることになりますが、もちろんコーキング剤などを使用するため、雨漏りの対策はしっかりとなされます。
設置工事の際に瓦が割れることも少ない工法と言われています。
・「支持金具工法」…瓦の隙間から金具を差し込み屋根瓦に直接ビスでパネルを固定する工法です。
瓦に穴が開くようなことはないですが、瓦に荷重がかかることから、金具周辺に年数が経過した瓦があると、そうした瓦は割れる心配があります。
さらに瓦同士に隙間ができてしまう恐れもあるので、雨漏りの心配もゼロではなくなります。
・「支持瓦工法」…パネルを設置する場所の瓦を取り外し、金具がついている瓦と取り換えてパネルを設置する工法です。
設置が簡単で、瓦に負担をかけることがなくなるのですが、瓦を差し替える分、費用は割高になります。
屋根材がスレートの場合
スレート屋根と言うのは昨今大変急増している屋根材で、セメントに特殊繊維を混ぜて作る屋根材です。
軽く色やデザインが比較的自由になる、また施工も簡単ということで人気を集めています。
また、ソーラーパネルを設置するにしても、初期費用は瓦屋根と比較し15〜20%程度安くなると言われています。
ただ、スレート屋根は10年ほどが耐用年数なので、それを超えてくると屋根の塗装をし直さなければなりません。
ソーラーパネルの耐用年数が15〜20年と言われているので、ソーラーパネルは何の問題もないのに、屋根の塗装替えのために、パネルを取り外さなければならない事態にもなりかねません。
さらに、スレート屋根へのソーラーパネル設置は、支持金具を取り付ける時に屋根に穴を開ける必要があるのですが、このことにより雨漏りが心配になることもあるようです。
スレート剤は雨漏りに弱いために、既存の住宅のスレート屋根に取り付ける時は、まず屋根そのものがどの程度傷んでいるのかということをしっかり検証する必要がでてきます。
屋根材が金属の場合
一般的に屋根材に使用される金属と言うのはトタン、ステンレス、銅板、アルミニウム板、ガルバリウム鋼板などで、通常の住宅に多いのはガルバリウム鋼板です。
こうした屋根にソーラーパネルを設置する際の工法として一番主流なのは、屋根に穴を開け、垂木部分に架台を設置するというものです。
ただ、この場合は屋根に穴を開けるので、何と言っても雨漏りを心配する必要がでてきます。
もちろん、穴を開けた部分はコーキング剤で雨漏りがしないように対処するのですが、こうした工事の手法は施工業者によって異なり、また実際の工事では、コーキング技術は職人さんの腕によるので、絶対大丈夫!とは言えません。
最近では、金属屋根材に付いている凸凹を利用した、屋根に穴を開けなくて済むようにできる工法が開発され、普及し始めています。
一方で、ガリバリウム鋼板などは、10〜15年でメンテナンスが必要になってくると言われているので、その際にソーラーパネルの設置があってメンテナンスがスムーズにいかない…ということがあることもまた事実のようです。